春はあけぼの。 やうやう しろく なりゆく 山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細く たなびきたる。 夏は夜。 月の頃は、さらなり。 闇もなほ。 蛍の多く飛び違ひたる、また、ただ一つ二つなど、ほのかに うち光りて行くも をかし。 雨など降るも、をかし。 秋は夕暮。 夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、からすの、寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへ、あはれなり。 まいて、雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いと をかし。 日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。 冬は、つとめて。 雪の降りたるは、言ふべきにもあらず。 霜のいと白きも、また、さらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭もて渡るも、いとつきづきし。 昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりて、わろし。 |
祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。 おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。 たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。 |
ぎおんしょうじゃのかねのこえ、しょぎょうむじょうのひびきあり。 しゃらそうじゅのはなのいろ、じょうしゃひっすいのことわりをあらわす。 おごれるひともひさしからず、ただはるのよのゆめのごとし。 たけきものもついにはほろびぬ、ひとえにかぜのまえのちりにおなじ。 |
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。 よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。 世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。 たましきの都のうちに、棟を並べ、甍を争へる、高き、卑しき、人のすまひは、世々経て尽きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家はまれなり。 あるいは去年焼けて今年作れり。 あるいは大家滅びて小家となる。 住む人もこれに同じ。 所も変はらず、人も多かれど、いにしへ見し人は、二、三十人が中に、わづかにひとりふたりなり。 朝に死に、夕べに生まるるならひ、ただ水のあわにぞ似たりける。 知らず、生まれ死ぬる人、いづかたより来たりて、いづかたへか去る。 また知らず、仮の宿り、たがためにか心を悩まし、何によりてか目を喜ばしむる。 その、あるじとすみかと、無常を争ふさま、いはば朝顔の露に異ならず。 あるいは露落ちて花残れり。 残るといへども朝日に枯れぬ。 あるいは花しぼみて露なほ消えず。 消えずといへども夕べを待つことなし。 |
つれづれなるまゝに、 日ぐらし硯に向かひて、 心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、 あやしうこそ物狂ほしけれ。 |
草の戸も 住み替はる代ぞ 雛の家 行く春や 鳥啼き魚の 目は泪 夏草や 兵どもが 夢の跡 閑さや 岩にしみ入る 蝉の声 五月雨を あつめて早し 最上川 |
くさのとも すみかわるよぞ ひなのいえ ゆくはるや とりなきうおの めはなみだ なつくさや つわものどもが ゆめのあと しずかさや いわにしみいる せみの こえ さみだれを あつめてはやし もがみがわ |
子曰。 學而時習之。 不亦説乎。 有朋自遠方來。 不亦樂乎。 人不知而不慍。 不亦君子乎。 |
子曰く、 学びて時に之を習う。 亦た説ばしからずや。 朋有り、遠方より来たる。 亦た楽しからずや。 人知らずして慍おらず。 亦た君子ならずや。 |
し いわく、 まなびてときに これをならう。 また よろこばしからずや。 ともあり、えんぽうよりきたる。 またたのしからずや。 ひとしらずして いきどおらず。 またくんしならずや。 |
子曰。 吾十有五而志于學。 三十而立。 四十而不惑。 五十而知天命。 六十而耳順。 七十而從心所欲。不踰矩。 |
子曰く、 吾十有五にして学に志す。 三十にして立つ。 四十にして惑わず。 五十にして天命を知る。 六十にして耳順う。 七十にして心の欲する所に従いて、矩を踰えず。 |
し いわく、 われじゅうゆうごにしてがくにこころざす。 三十にして立つ。 四十にしてまどわず。 五十にして天命を知る。 六十にして耳したがう。 七十にして心の欲する所に従いて、のりをこえず。 |
子曰。 温故而知新。 可以爲師矣。 |
子曰く、 故きを温ねて新しきを知れば、 以て師為る可し。 |
し いわく、 ふるきをたずねて あたらしきをしれば、 もって したるべし。 |
国破山河在 城春草木深 感時花濺涙 恨別鳥心驚 烽火連三月 家書抵萬金 白頭掻更短 渾欲不勝簪 |
国破れて 山河在り 城春にして 草木深し 時に感じては 花にも涙を濺ぎ 別れを恨んでは 鳥にも心を驚かす 烽火 三月に連なり 家書 萬金に抵る 白頭掻かけば 更に短く 渾べて 簪に勝えざらんと欲す |
くにやぶれて さんがあり しろはるにして そうもくふかし ときにかんじては はなにもなみだをそそぎ わかれをうらんでは とりにもこころをおどろかす ほうか みつきにつらなり かしょ ばんきんにあたる はくとう かけば さらにみじかく すべて しんにたえざらんとほっす |
まだあげ初めし 前髪の 林檎のもとに 見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは 薄紅の 秋の実に 人こひ初めしはじめなり わがこゝろなきためいきの その髪の毛にかゝるとき たのしき恋の 盃を 君が情に 酌みしかな 林檎畑の 樹の下に おのづからなる 細道は 誰が踏みそめしかたみぞと 問ひたまふこそこひしけれ |
まだあげそめし まへがみの りんごのもとに 見えしとき 前にさしたる はなぐしの 花ある君と思ひけり やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは うすくれなゐの 秋のみに 人こひそめしはじめなり わがこゝろなきためいきの その髪の毛にかゝるとき たのしき恋の さかづきを 君がなさけに くみしかな 林檎畑の この下に おのづからなる ほそみちは たが踏みそめしかたみぞと 問ひたまふこそこひしけれ |
寿限無、寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末 食う寝る処に住む処 藪ら柑子の ぶらこうじ パイポ パイポ パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの 長久命の長助 |
じゅげむ、じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ くうねるところにすむところ やぶらこうじのぶらこうじ パイポ パイポ パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの ちょうきゅうめいのちょうすけ |
庭には二羽鶏 生麦 生米 生卵 東京 特許 許可局 赤巻紙 青巻紙 黄巻紙 すももも桃も桃のうち 隣の客はよく柿食う客だ この釘は ひきぬきにくい釘だ 坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた 瓜売りが 瓜売りに来て 瓜売れず 瓜売り帰る 瓜売りの声 この竹垣に竹立てかけたのは 竹立てかけたかったから竹立てかけた かえるぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ あわせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ |
敵を知り己を知れば百戦危うからず 人間万事塞翁が馬 賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ |
てきをしり おのれをしれば ひゃくせんあやうからず じんかん ばんじ さいおうがうま けんじゃはれきしにまなび、ぐしゃはけいけんにまなぶ |